バーバリーの代名詞として語られるトレンチコートは、コットン100パーセント素材のもので、通気性、防水性が共に優れていたため、たちまち大ヒットに至りました。
防水性を高めるために、生地を織り上げる前の段階で防水加工を施したことでその確固たる地位を確立しました。レインコートと言えば、クロスのゴム引きコートが主流の時代にあって、ギャバジンを製品化したことはかなり画期的なことでした。
バーバリーは英国軍隊の御用達の紳士服として使用され、タイロッケンコートと呼ばれる、トレンチコートの前身にあたるものが1895年のボーア戦争の際に使用されたことが始まりとされています。
タイロッケンコートのウエスト部分にベルトが付くことで、現在のトレンチコートと呼ばれるスタイルに近いコートへと進化しました。
1901年にカタログを発行したとき、「名誉・勇気・高潔」の意味である甲冑の騎士のマークを取り入れたことにより、現在のレーベルデザインができあがりました。
1914年、第一次世界大戦の勃発。トレンチと呼ばれる塹壕での戦闘において、適応できるように工夫を施され、コートは使用されました。
トレンチで実際に使用したコートのためその場所の名前が付けられ、現在に至るまでトレンチコートという名前が残っています。
ラテン語で前へを意味するProrsum(プロ―サム)の旗もこのとき取り入れられました。1926年には王室の近衛連隊の士官用グレートコートも作成された経緯もあります。
トレンチコートのディテールには、プローサムに表現されるように、実際に軍に使われた歴史的な背景が詰まっています。
カラーの裏にあるジグザグのステッチはおしゃれのためではなく、軍で使用されていた頃すべての気候に対応できるように機能性を追求した名残です。寒い日に襟を立てた場合においても、襟がすぐに倒れることなく、崩れないようになっています。
そして、右肩に付いているフラップもその当時の名残です。襟を立たせたときに、布が二重になっていることで、雨が浸入するのを防いでいます。右肩だけにあるのも、男の人の服が右合わせで、雨にあたる方だけに付けていることが関係しています。
また、タイロッケンと言われていた頃についていたベルトやD字型のリング。これも戦闘中に使用する手りゅう弾や水筒を引っかけたり、カバンを持ち歩く際の固定に使用されていたものです。
様々なディテールから実際軍隊で活動していた男性たちが、実際の戦闘のとき、雨風から体を守り、移動しやすくするために機能性を高めていったことがよく分かります。バーバリーのトレンチコートを見れば、時代を超え人気である理由がよく分かります。