レッドソールができるまで
クリスチャン・ルブタン(Christian Louboutin)のシューズの一番の特色といえば、全てのシューズが、レッドソールと呼ばれる、深紅の靴底になっていることです。このレッドソールは、クリスチャン・ルブタンがブランドを立ち上げて間もない頃、偶然に生まれたものでした。
イタリアの工場で、初めて出来上がった試作品のシューズの、主にシェイプのチェックをしていた時の出来事です。
試作品は指示通りに出来上がっていましたが、どこか想像していたものと違い、何かが足りないと感じ、改めてシューズを見たクリスチャン・ルブタンは、ソールに何も色がついていないという事に気がつきました。
その時、ふと隣に視線を移すと、試作品の履き心地を試す為に一緒に来ていた女性が、シャネルの真っ赤なマニキュアを塗っている姿が、目に飛び込んできました。
彼は、女性からその真っ赤なマニキュアを奪うと、彼女の文句の言葉も無視し、ソールに色を塗り始めました。色を塗り終えたシューズとスケッチを見比べると、まさしく同じシューズが出来上がっていました。
イヴ・サンローランとの訴訟
当初は、毎シーズン色を変えようと思っていたそうですが、赤が定着し、それがトレードマークになり、アメリカでは商標登録もしています。
そして、2011年4月、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)が市場に出した、上部と靴底が共に赤いシューズが、レッドソールの商標権を侵害するとクリスチャン・ルブタンが主張し、アメリカ国内でのレッドソールを使用したシューズの販売差し止めと、100万ドルの損害賠償を求めて訴訟を起こしました。
ニューヨーク南部地区連邦地裁での第一審判決では、クリスチャン・ルブタンのレッドソールが、商標保護を受ける資格があると証明することは困難であると判断され、訴えを退けましたが、判決が不服として控訴しました。
2012年9月5日、第二審の、ニューヨークの米連邦控訴裁判所の判決では、第一審の判決を覆し、ソールのみが赤く、他の部分が別の色でコントラストがあるシューズである場合に限り、レッドソールの商標権を認める判決が下されました。
この判決に対し、
「判決の内容に大変満足しています。カラーはファッション産業における商標となり得、世界的にも有名なクリスチャン・ルブタンのレッドソールが、法的に認められ、保護されるべきだということも法廷に認めてもらえたことは、嬉しいです。今後もこの商標を守るため、我々はあらゆる方法を尽くしたいと思っています。」と声明を発表しています。
一方、イヴ・サンローラン側は、「判決は、クリスチャン・ルブタンの商標権を、コントラストがある色使いの場合に限ったものであって、今回の様に、赤いシューズに赤いソールを使用することは問題ないので、我々は裁判に勝ったと考えています。」とコメントしています。