始まりのきっかけ
2006年に創設された、シューズブランドとしては大変新しいガジアーノ&ガーリング(Gaziano&Girling)。このブランドは天賦の才を持つ2人の出会いから生まれました。
チーニー(Cheaney)やジェフリーウエスト(Jeffery West)などを経てエドワードグリーンに参加し、1990年代後半の混迷から同社を救った立役者、トニー・ガジアーノ(Tony Gaziano)。
そしてもう一人、かのジョンロブ(John Lobb)やジョージ・クレバリー(George Cleverley)、エドワードグリーン(Edward Green)などでビスポーク一筋で叩き上げてきたディーン・ガーリング(Dean Girling)。この2人を引き合わせたのはエドワードグリーンでした。
ガジアーノは、エドワードグリーンの名作ラストに挙げられる82や888を生み出した人物ですし、ガーリングも、職人たちの中では別次元の履き心地を生み出すと評判の腕の持ち主でした。
これほどの2人がタッグを組むわけですから、若いとは言え大きな期待を寄せられるブランドと言ってもいいでしょう。
普遍性とモダンの融合
まず特徴としては、現代的で洗練されたシルエット。いつの時代でも受け入れられる普遍性を持ちながらも、決して古臭さは感じさせないモダンなデザインです。
このあたりの絶妙なバランスは、靴作りに情熱を捧げてきた2人の経験とセンスが大きく物を言っているようです。
またレディメイド(既製靴)でありながら、作りはビスポーク顔負けという手のかけ方も、ガジアーノ&ガーリングの特徴でしょう。
強いこだわりの利いた靴
例えば、土踏まずの部分に採用されるデザインはベベルドウェストで、フィルドバック仕様。
これは土踏まず部分を裏側から見た時に、美しい山型に絞ってある仕様のことで、フィッティングを高めると同時にエレガントな美しさをもたらします。このような手法をレディメイドで実現することは、なかなかないでしょう。
また、ソールの素材には英国屈指の伝統的タンナー、J&F.J.ベイカー社の革を使用しています。J.ベイカー社は2000年前の製法を受け継ぐ伝説的なタンナーと言われており、その革は大変高価で、柔らかいのに丈夫で耐久性があるのが特徴です。
通常、ここの革を使うのはジョンロブやエドワードグリーンなど一部のビスポークのみで、レディメイドの靴に使っているのは、世界でもガジアーノ&ガーリングくらいとのことですから、そのこだわりは大変なものです。
新進気鋭のブランド
イギリスのシューズメーカー事情というと、名門の伝統、老舗、と言ったイメージが強い中で、この新進気鋭ブランドの登場は、非常に新鮮であったと言ってもいいでしょう。
ですが、ガジアーノとガーリングの2人には、エドワードグリーンその他を経る中で培われた、英国伝統の靴作りの血が確かに流れており、今後どのようなシューズを生み出していくのか期待が集まります。