エルメネジルドゼニアの生地は天然の毛が主に使われて作られています。そのため、より上質な原毛を確保することが、創業当時から品質を維持するためにもとても重要なことでした。そこで、エルメネジルドゼニアが行っているのが、「トロフィー制度」と呼ばれるものです。
「トロフィー制度」
これは、毎年行われており、数ある中から、優れた原毛を生産した生産者を選びます。
そして、優秀な生産者を表彰するというもので、トロフィー制度を通してより良い原毛を生産しようというモチベーションの向上につなげています。
原毛の質の中で最も重要視されているのが。繊維の細さです。それだけですべてが決まるわけではなく、他にも強さや長さ、白さなど様々な要素も複合的に評価されます。
このトロフィー制度は、ウールだけではなく、カシミア、モヘアなどを複数の原毛を対象にトロフィー制度を創設しています。その中でも、最も歴史がある代表的なものは、エルメネジルドゼニア・エキストラファイン・ウール・トロフィーというもので、最も優れた羊毛を表彰するものです。
トロフィー制度の歴史
その歴史は、1936年にまでさかのぼります。創立当時の評価の対象になっていた原毛は、オーストラリア大陸の東南に位置しているタスマニア島で生産された羊毛のみでした。
タスマニアで生産される羊毛が非常に細く、一般的なウールの3分の2程度の非常に細いもので大変希少で上質なものでした。
またタスマニア産の羊毛はオーストラリア全体の3パーセント程度しかなくとても貴重でした。そのため、この地でのトロフィー制度を創設したのではないかと推測されています。
そして、1980年には、このトロフィー制度の対象となる原毛を、より広範囲からよりよい原毛と生産者を集めたいとの考えから、タスマニアに限定せず、オーストラリア全土に拡大します。
その結果、原毛の繊維はどんどん細くなり、2002年に繊維の平均直径が13.9ミクロン以下の細さの羊毛を対象に、新たなトロフィー制度を設け、エルメネジルドゼニアヴェリュス・オウレウムインターナショナルトロフィーと名前を改めます。そうすることで、オーストラリア以外にも、ニュージーランド産の羊毛も対象に加わることになりました。
カシミア山羊の原毛を評価する省には、エルメネジルドゼニアカシミアトロフィーがあり、優れたカシミアを産出する中国や内モンゴル自治区で、1985年と1986年の2回だけ開催され、その後は政治的な理由により中断されています。
アンゴラ山羊の毛であるモヘアの中で、最も上質とされるのは、生後6か月以内の最初に刈り取られるキッドモヘアです。特に南アフリカ産のものが光沢感も優れており、汚れが付きにくく、品質が均一なものが多かったため、1970年にトロフィー制度がこの地で設けられました。それが、エルメネジルドゼニア・モヘア・トロフィーで、モヘアの原毛を評価する賞です。
現在では、トロフィー制度のような制度を設けるメーカーは他にもあります。しかし、トロフィー制度を創設したのは、エルメネジルドゼニアが最初でした。これは、創業当時から高品質な素材を求め、生産者との関係を築こうとしていたことが伺えます。