ケリーバッグの由来
登場から80年、変わらぬ人気を保ち続けるエルメスの定番バッグ、ケリー(Kelly)。様々なブランドが模倣し、世に"ケリータイプ"のバッグが氾濫する中、真のケリーバッグと呼べるのは、このエルメスのケリーだけです。
その誕生は1935年まで遡ります。当時はまだケリーという名前ではなく、「サック・ア・クロア」と呼ばれていました。
それから20年ほど経った1956年のとある日、22歳でデビュー後、一躍ハリウッド女優となり、モナコ公国の王妃に華麗なる転身をしたグレース・ケリーが、車から降りる際に、待ち構えていたパパラッチにシャッターを切られてしまいます。
その瞬間、当時妊娠していたケリー王妃は、とっさに持っていたバッグでお腹を隠しました。その時の写真が「LIFE」誌の表紙を飾ったことで、このバッグの存在が世界中に広がることとなります。
その反響の大きさに目を付けたエルメスが、モナコ公国の許可を経てこのバッグを「ケリー」に改名、ケリーバッグ=セレブリティー、憧れのバッグというイメージが出来上がっていったのでした。
ケリーの魅力
ケリーバッグの特徴は、なんと言ってもその洗練されたフォルムとシンプルなデザインでしょう。ムダを削ぎ落とした機能美の中に、スタイリッシュなビジュアルと確かな収納力も備えており、デイリーユースやビジネスユースはもちろんのこと、フォーマルなシーンでも使える汎用性の広さがあります。
実はケリーには、ほぼ同じデザインに見えて、2つの異なるタイプが存在します。それは、革パーツの縁を内側に縫い込んで、外から縫い目が見えないようにする「内縫い」タイプと、外側できっちり縫い合わせる「外縫い」タイプです。
内縫いタイプは、内側に丸めこむようにして縫うため、全体的なフォルが丸みを帯び、フェミニンで柔らかい印象になるのが特徴です。一方、外縫いタイプは、縫い目がシャープで台形のカッチリとしたフォルムとなり、フォーマルシーンでは特に映えます。いずれのタイプもそれぞれに魅力があり、それがケリーの衰えない人気の要因にもなっているのでしょう。
ケリーのサイズ展開
ケリーのサイズバリエーションは15~35の間で、6サイズ展開となっています。「ケリー15」は、横幅15cmほどの大変小さなバッグで「ミニミニケリー」とも呼ばれます。市場でもめったに見かけないレアモデルで、コレクターが求めるサイズでもあります。
「ケリー20」は横幅20cmほど。最低限の身の回りの物が入る大きさで「ミニケリー」と呼ばれます。
「ケリー25」あたりから一般的に使いやすいバッグでしょうか。一通りの収納力はあります。外縫いタイプが多いのもケリー25です。「ケリー28」は横幅28cm×高さ22cmほど、かさばりすぎないので普段使いには便利な上、適度に容量もあって手頃なサイズと言えるでしょう。
その他、「ケリー32」「ケリー35」まで、サイズ展開が豊富なのもケリーのポイントです。カラーや素材のバリエーションも豊富なため、その選択肢は非常に多いバッグです。
2007年に発売されたアレンジモデル「ケリームー」は、芯地を入れずに縫い込むことで、マチの部分を折り畳んで持ち運びもできるという使い勝手の良さで人気となりました。中には外縫いタイプでしかも畳めて、復元力があって型崩れしないという画期的なものもあり、伝統的な定番モデルであってもそれだけにとどまらないという、エルメスの姿勢を感じることができます。