ジョンロブの靴づくりを受け継ぐブランド
東京は世田谷、成城に工房を構えるビスポークブランド Bench Made(ベンチメイド)。そのCEOにして靴職人である大川バセット由紀子は、ジョンロブで8年間働いていたことのある経歴の持ち主です。
人が10人いれば20本の異なる足があり、その1本1本の足の特徴を踏まえてラスト(木型)を作成、対話をしながら(Be Spoke)デザインを起こし、納得がいくまで仮縫いを繰り返して作り上げる。
これがベンチメイド流で、ジョンロブで培った経験を活かして、お手入れと修理をしながら30年付き合える靴作りを目指しています。
靴職人 大川バセット由紀子
大川は子供の頃から靴好きだったそうで、短大を卒業後すぐに靴の会社で働いたこともありました。
ですが当時はみんな工場生産で、彼女自身が想像していた手縫いの職人技による靴作りのイメージと違ったことから、すぐに退職して1995年に単身イギリスに渡りました。
そして、イギリスを代表する靴の学校、コードウェイナーズカレッジ(Cordwainers College)で靴作りを学び始めることとなります。
在学中には、ジミー・チュウ(Jimmy Choo)やエマ・ホープ(Emma Hope)なども受賞したことがある権威ある賞「ヤングデザイナーオブジイヤー」に入賞していた他、入学後半年経った頃からは、並行してジョンロブでアルバイトとして働き始め、ジョンロブの靴職人ポール・ウィルソンに手縫いを習うようになっていました。
ジョンロブ初の日本人職人
そのことについて大川は「ただでいいから働かせてください」とジョンロブに手紙を書いたのだと語っています。
そして1997年、カレッジの卒業と同時にジョンロブで正社員として働き始めました。
ジョンロブ初の日本人社員として働いていた大川は、クリッカー(革の裁断)、パタンナー、クローザーなどを経験し、若手の育成にも携わった他、エリザベス女王の靴を作ったこともあったそうです。
やがて2004年にはジョンロブを退社し、帰国して日本で靴作りの教室を開きました。
そして2006年に、オリジナルのビスポークブランド「Bench Made」を立ち上げました。さらに2011年からはレディース向けのビスポーク「Acoustic Shoes」もスタートさせています。
大川の考えるジョンロブ
大川はアフターケアを重視しており、お店で買って終わりではなく、足がどこか痛くなってきたらすぐ修正、体重が変わったらまた木型を作り直す、といった、まるでかかりつけの医者のような対応をするのがビスポークだと考えています。
実際、ジョンロブでも、お爺さんの代からジョンロブでオーダーしていて、成人するとそのお爺さんに連れて来られて「前の職人さんは亡くなっちゃったけど、今はこの人がやってくれるんだ」というように受け継がれていたそうです。
そして、お客様に「こうしてほしい」と要望されたら、それを職人が集まって叶えられるように話し合う。絶対に断らない。ジョンロブはそこまでしてのあの値段なのだと、当時を振り返って語っています。