「キング・オブ・シューズ」
ジョン・ロブは、ロイヤルワラント(英国王室御用達)を授かっているイギリスを代表する名門シューズブランドです。数あるオーダーメイドのブランドの中でも世界最高峰でありキング・オブ・シューズとも言われています。
そのプレミアム度たるや、高級車を盗まれた持ち主が新聞広告で「車はくれてやるから、トランクに入れてあったジョンロブの靴だけは返してくれ」と犯人に呼びかけた、という逸話が残っているくらいです。
ブランドの始まり
1866年、靴職人であったジョン・ロブがロンドンのリージェントストリートにお店を出したのが、ブランドの始まりでした。
ロンドンに1号店をオープンしてまもなく、その技術と品質の高さは世界最高峰であるとの評判が広がり、上流階級や政財界のエリートなどを顧客として、ビスポークシューズの受注をとるようになりました。
世の紳士たちがこぞってジョン・ロブにオーダーをし、たちまち当時の靴職人として一流の地位を築き上げたのです。
そして1902年には、二代目がフランスのパリにもブティックを出店、現在でも受け継がれている名モデル「ウィリアム」(William)、「ロペス」(Lopez)などを生み出し、洗練されたパリっ子たちをも魅了し、さらに評判が拡大していきました。
救世主となったエルメス
その後、第一次世界大戦を経て、世界中にブティックを展開するようになったのですが、手間とコストがかかるジョン・ロブのシューズ生産は、やがて経営難の危機を迎えます。ついに1976年には、パリの2号店も閉店を迫られることとなりました。そこで救いの手を差し伸べたのが、エルメスだったのです。
ジョン・ロブの靴作りの技術を高く評価していたエルメスが、パリのブティックを買収したことで、ジョン・ロブはエルメスグループの傘下に入りました。
この時、ロンドンのお店、John Lobb Ltd.だけは一族の手に残り、今でも「ジョン・ロブ・ロンドン」(John Lobb London)の名前で、ビスポーク専門ブランドとして独自に運営を続けています。
一方、エルメスに買収されたジョン・ロブは「ジョン・ロブ・パリ」(John Lobb Paris)として活動することとなりました。
展開の広がり
エルメスグループに入ってほどなく、今までのジョン・ロブが、いわゆる一部の上流階級だけを対象としたビスポークしか取り扱っていなかったことから、既製のシューズも需要があると気づきます。
そして1982年にブランド初の既製靴のコレクションを発表、1990年には既製靴を取り扱う初の店舗をパリにオープンさせました。さらに1994年には、著名な靴製造業者が軒を連ねるイギリスのノーザンプトンにファクトリーを設立。
現在の既製靴のデザインと、ハンドメイドによる靴作りは、このファクトリーで行われています。
その後は、ロンドンのジャーミンストリートをはじめ、ヨーロッパはもちろん、アメリカ、アジア、中東に至るまで、主要都市に次々にお店をオープン、世界中にブランド展開をしています。
パウラ・ジェルバーゼ(Paula Gerbase)
なお、2015年秋冬からは女性デザイナー、パウラ・ジェルバーゼ(Paula Gerbase)をクリエイティブディレクターに迎え、新生ジョン・ロブのコレクションを発表しています。
彼女は「1025」という自身のブランドを持つデザイナーで、かつてはサヴィル・ロウの老舗テーラー「ハーディ・エイミス」や「キルガー」などで修業を積んできた人物です。
ブランド150年の歴史の中で、常に紳士のための靴を作ってきたジョン・ロブが、女性デザイナーの手によってどのような進化を遂げるのか、注目が集まるところです。