フランス発のブランド、メゾンマルジェラ(Maison Margiela)は、1988年にマルタン・マルジェラ(Martin Margiela)によって創始されました。
設立から27年間は、デザイナーの名前をとってメゾンマルタンマルジェラ(Maison Martin Margiela) のブランド名でしたが、2008年にはマルジェラが引退、2015年から現在の名前に改名されています。
マルジェラという人物
ブランドの創始者マルジェラは、デビュー当時こそ公の場に姿を見せることもありましたが、次第にメディアへの露出を避けるようになったミステリアスな人物です。
例えば、雑誌のインタビューには全てFAXで対応し、「私たち」と複数人称を使用して答えるなど徹底して姿を現すことはありませんでした。
そんなマルジェラがファッションブランドの作品を通して私たちに問いかける「服の意味」とは、ブランドの最たるオリジナリティであるタグと、マルジェラのコレクションでの発表作品に見出すことができます。
服そのものの価値を大事に
メゾンマルジェラのタグは、0から23までの数字が書かれており、一つの数字に丸がつけられたシンプルなものです。それぞれの数字には「0=手仕事により、フォルムをつくり直した女性のための服」などの異なる意味があります。
通常、ブランドのタグは取れないようにしっかりと縫い付けられているものですが、メゾンマルジェラのタグは簡易的な縫製でつけられています。四隅を白い糸で止めただけの簡単なもので、実際、簡単にほどくことができます。
古着を取り扱う時、ブランドのタグの有無がその服の価値を左右しますが、そのことは服の質やデザインよりもブランドネームにバリューが置かれていることを示唆しています。
マルジェラは、ブランドのタグをあえて外しやすくすることで、ブランドのネームバリューではなく、服そのものの価値を感じてほしいという意味を込めたのでした。
マルジェラの斬新な試み
また、マルジェラは、パリコレの発表の場として建物ではなく、貧民街の広場を選定したり、モデルに一般人を起用したりするなど、規格外のショーを行ってきました。
コレクションの時期に合わせて新しいスタイルを提案する業界の在り方に反発し、過去の作品に制作年を貼りつけて新しいコレクションを構成するという試みも行っています。
とりわけ、衣服の素材に関してマルジェラは他と徹底的に一線を画してきました。カットしたレコードや蝶ネクタイ、スキーグローブ、櫛や王冠、割れた食器など、到底衣服の素材として選ばれそうにないものをあえて使用しています。
或いは、古着を活用したり、新しい服を古着風にする等、消費社会を象徴するファッションの在り方に疑問を投げかけ、リサイクルという新たな価値を提案しています。
こうしたマルジェラの動きは、結果的に1990年代のグランジブームを牽引していくことになりました。既存のファッション業界の在り方にアンチの態度をとり続けるマルジェラに、彼自身が「服の意味」を問い続けている真摯な姿勢が見受けられます。