デザイナーの考えるジェンダーレス
ラグジュアリーストリートブランドの代名詞、オフホワイト(OFF-WHITE)のクリエイティブディレクターを務めるヴァージルアブロー(Virgil Abloh)は、ここ数年でメンズとウイメンズのファッションの境界線は殆どと言っていいほどなくなっていると考えています。
彼の考えるメンズとウイメンズの違いは、携わる人のアティテュードの一点しかないと主張し、昔のように女性が着用する服は、女性らしさを強調するものばかりとは限らなくなっていると語り、そのモダニティをオフホワイトで表現することに挑戦しています。
新しい価値観の重要性
しかしながら、ヴァージルアブローはオフホワイトのコレクションはユニセックスという定義ではない、とも語ります。彼がウイメンズファッションを制作する時は彼の精神や姿勢は、女性が着るということを前提に作られていると言います。
そして、現代のファッションカルチャーはスタイリングで自らを表現することが重要であるため、オフホワイトのウイメンズラインでは、スカートという女性らしさの象徴であるアイテムにスウェットシャツを合わせるスタイルや、手縫いやダメージ加工に30時間を費やした、癖が強いホワイトのTシャツやデニムといったアイテムをラインナップに混ぜ込んでいます。
このようなスタイリングプロセスこそが現代らしさであり、新しい価値観であると考える彼は、例えばスウェットにフォーマルなスカートを合わせたファッションでレッドカーペットを歩くというような新しい発想が、ファッションやアートの歴史の今である、と提言しています。
ウィメンズラインのきっかけ
オフホワイトがウイメンズラインを始めるきっかけとなったのは、男性のものとして認識されることが多かったストリートウエアのハードルを下げたい、というヴァージルアブローの思いがありました。
当初、オフホワイトのウイメンズラインのデザインソースにはメンズラインに使用していた表層的な素材やグラフィックを使用し、それらをウイメンズらしいパターンへと落としこむ表面的なものでしたが、試行錯誤の末、女性らしい素材でメンズライクなシルエットに仕立てたり、メンズラインと同様のプロセスを踏んだグラフィックをラグジュアリーなテクニックに組み合わせたりすることに成功します。
ラグジュアリーブランドがジェンダーレス時代に突入したことはとてもクールでモダンなことであると考えるヴァージルアブローは、ファッションは自己表現であり、ジェンダーレス時代に突入することによってさまざまなエンドユーザーが存在し、ファッションを自己表現として、これまで以上に自由に着飾ることができるだろう、考えています。