「ロミオ+ジュリエット」
プラダと映画の関わりは、多岐にわたりますが1996年に「ロミオ+ジュリエット」で衣装提供したのが始まりです。その後、数々の映画に衣装提供をして、プラダと映画は同じ文化産業の一つとして互いに高めあってきました。
「ロミオ+ジュリエット」に衣装提供したのは、ミウッチャが監督のバズ・ラーマンと旧知の友人であったことがきっかけです。主人公のロミオ演じるレオナルド・ディカプリオの衣装デザインを担当。
青いスーツやエキゾチックなプリントの使いのアロハシャツが、不良っぽさと純粋さを兼ね備えたロミオを象徴したデザインでした。
「エクスマキナ」
その後2007年には、日本のアニメーション映画「エクスマキナ」に衣装デザインの提供をしました。トップデザイナーとアニメの初めての本格的なコラボレーションとして注目を浴びます。
ミウッチャ・プラダは、「エクスマキナ」の前編「アップルシード(2004年公開)」を観て、映像の美しさとストーリーに惹かれてデザインを引き受けました。
ミウッチャがデザインした衣装は、スタッズ付きのアーミーブーツや、ファーのポケット付きのミニドレス風コート、エルボーパッド。異素材の組み合わせが目を引くデザインで、タフでありながらもセクシーな女性像という、キャラクターの個性を活かしたミウッチャらしい遊び心の溢れるデザインでした。
この相反する要素を組み合わせて新たな世界を表現しようとする試みは、彼女のデザインテーマとも共通しており、この頃の彼女のコレクションとも共通していました。
「華麗なるギャッツビー」
2013年には、再びバズから「華麗なるギャッツビー」への衣装提供の依頼を受けます。「ロミオ+ジュリエット」以来、17年ぶりのコラボレーションです。
ミウッチャは衣装デザイナーのキャサリン・マーティンと協力し、パーティーシーンごとに数十着のドレスを用意。衣装はプラダとミュウミュウのアーカイブコレクションの中からセレクトされました。
そのアーカイブコレクションに、映画の舞台となった1920年代風ともいえる奇抜でモダンな味付けを加え、映画のシーンにふさわしいデザインを施したものが、ゴージャスなパーティーシーンなどに使われています。
それらの美的にすぐれ、アバンギャルドさとエレガントさを兼ね備えたパーティードレスは、1920年代という、古き良き時代をモチーフとしながら、未来的で誘惑的な新しいコレクションのようになっていて、どれをとっても現代最高のデザイナーの一人であるミウッチャ・プラダならではのデザイン力の高さが発揮されています。
中でも、ヒロインであるデイジー・ブキャナンの衣装である、ビジューがあしあわれたパーティードレスは、プラダのアーカイブコレクションの中からひときわ豪華なシャンデリアドレスをこの映画のために特別にアレンジしたもので、その豪華な美しさは目を見張るものです。
物語の時代背景に忠実に当時のファッションを参考にしながら、宝石を散りばめたようなゴージャスなデザインのパーティードレスの数々は、映画をより印象的なものにしています。
この映画の世界観をそのまま展示した衣装展「CATHERINE MARTIN & MIUCCIA PRADA DRESS GATSBY」がプラダニューヨーク・エピセンターで開催され、日本でもプラダ青山店にて開催されました。
映画のなかで実際に使用されたプラダが提供したドレスの中から、約40着のカクテルドレスおよびイブニングドレス、そしてアクセサリーやバッグ、シューズ、小物まで、ほぼ映画のなかで使われていたそのままのコーディネートでの展示。
頭からつま先まで、映画の中の登場人物そのままを実際に目の前で堪能することができ、まるで絢爛豪華なパーティーシーンが目の前で繰り広げられているような展示が、訪れた人々を魅了しました。
プラダはファッションブランドとして、映画はショービジネスの中心として、時代が求める思想や、芸術性を表現することによって流行に大きな影響を与えてきました。これからもプラダと映画は、互いに影響しあいながら、人々を楽しませてくれることでしょう。