トムブラウン(THOM BROWNE.)の代表的なアイテムの1つに“バルカラーコート”があります。
一般的なバルカラーコートはラグランスリーブが主流となっている事が多い中、対してトムブラウンはセットイン・スリーブで本開き切羽仕様となっています。
スーツと同様に、ポケットの絞りの位置を従来より高めに設定する事で、すっきりとしたシルエットが生まれています。
さらには深めに入ったベントが特徴的なトムブラウンのコートは、今では定番アイテムとなりました。ベント部分にはレッド・ホワイト・ブルーのグログランテープが施されており、歩くたびになびくのもポイントの1つとなっています。
以前はサイドベンツタイプが主流に販売されていましたが、現行のモデルにはセンターベントが採用されている事が多くなっています。
またアンコンバージョンもありましたが、現在はコンストラクテッドが基本となっています。
春夏シーズンは背抜きの仕立てで、シェルボタン・衿裏はコットンピケ素材を使用しています。対して秋冬シーズンは総裏仕立てでホーンボタン・衿裏はフェルトが主流となっています。
生地にはイギリスのミラレーン社の良質な生地を使用しています。高密度綿ギャバジン2枚をボンディング加工して、ハリを持たせた生地を“マッキントッシュ”と呼称します。
これはイギリスのマッキントッシュ社とは別の物で、ゴム引きが施されているわけではなく、コットン100%で作られています。
カラーバリエーションもネイビーやグレー、定番のベージュと様々で、シーズンによってはウールやメルトン・ツイード・カーキツイル生地を用いる事もあります。
ビジネスコートの最も典型的な型で、基本的にはオーバーコートとして、スーツの上からの着用を前提に作られていますが、スーツとはもちろんのこと、ジーンズからスウェットパンツまで幅広いコーディネートに対応できるデザイン性と汎用性が特徴的なコートです。
セットイン・スリーブで肩パット入りのバルカラーコートは現在では少なくなってきているデザインです。
また最初はパリッとしていて固い生地感ですが、着こんでいくうちになじんだ風合いへと経年変化していきます。襟のパターンも計算されていて、襟を立てて着用しても良いデザイン性となっています。
ちなみに正式名称はバルマカーンコートと呼ばれることもあります。バルマカーンとは発祥地のスコットランドのインバーネス近郊の地名です。
ステンカラーコートとも呼ぶ場合もあります。ステンカラーは和製英語で”ステン”は”スタンド”が訛って日本語化したものとされています。