トムブラウン(THOM BROWNE.)の代表的なアイテムの一つにセットアップスーツがあります。トムブラウンのスーツは1818年創業のブルックスブラザーズが誇る、数あるマスターピースの中でも、アメリカンスーツの原点となった“ナンバーワンサックスーツ”をモデルにしています。
ブルックス社が1895年の発表以来、現在に至るまで“ナンバーワンサックスーツ”はアメリカンクラシックの原風景と言われています。麻袋(サック)に例えられた、ゆったりとしたシルエットは誰の体型にもしなやかにフィットします。身体を窮屈に押し込むのではなく、優しく包み込むような既成服スーツは当時画期的な発明でした。段返り三つボタン、穏やかなボックスシルエット、ナチュラルショルダー、自然なロールのラペル、後ろ身頃中央のベンツが特徴的なデザインとなっています。トムブラウンでは2011年春夏シーズンの際、これをベースに、ボックスシルエット・ナチュラルショルダーを誇張した“エクストラボディーサックスーツ”というモデルを発表しました。初のパリでのコレクションにてアメリカらしさを強調しました。
トムブラウン本人曰く「インスピレーション源は1950年~60年代初めのアメリカの男たち。この年代全ての“センシビリティ”に影響を受けており、この時代の人々は男女ともに真の意味で個性を持っていたという印象がある。」と言っています。特定の人物からの影響はなく、自分用に20着ほどの試行錯誤を繰り返した末に完成した最初のスーツは、ショーン・コネリーのジェームス・ボンドをイメージして作ったそうです。そこから全ては始まり、今やトムブラウンにとって最も重要なアイテムとなったのです。
以前は全てアメリカでハンドメイドで仕立て上げられていましたが、現在は日本製とアメリカ製があります。また、定番となっているのはグレーのウール生地です。明るいグレーから濃いグレーまでバリエーションは様々用意されています。“ジーンズにTシャツのような感覚で着てもらいたい”という想いから、イギリス製やアメリカ製の張りがあり固い生地を使用しています。イタリア製の生地のように柔らかくなめらかな生地はめったに使用しません。
ウール以外にもコットンやカシミヤなどの展開もあります。春夏シーズンはシアサッカーやコードレン、秋冬シーズンはフランネルやソーンプルーフツイードなどを使用します。
チェックやネイビーのものは、“ウィークエンド・スーツ”と呼ばれ、週末や仕事以外の際に着用する為のものとして提案されています。