1961年に公開されたオードリー・ヘプバーン主演の映画「ティファニーで朝食を」は不朽の名作として、今なお多くの人々に愛されています。1958年にトルーマン・カポーティが発表した同名小説を原作としたこの映画は、ニューヨークを舞台に自由気ままに生きる女性の主人公のファッショナブルなラブストーリーです。
当初、映画化にあたり主人公にはマリリン・モンローを起用する予定でしたが、セックスシンボルというイメージが固定化するのを嫌ったマリリンがオファーを断ります。
そこで急きょ、オードリーに白羽の矢が立ちます。マリリンとは全く異なったイメージのオードリーを主役へとキャスティングするにあたり、マリリンの魅力を生かして書かれていた脚本も、彼女の魅力が生かされるようなストーリーへと大幅に書き換えられました。
その結果、小説と映画は似て非なるものとなり、映画「ティファニーで朝食を」はオードリーのための映画として、彼女の人気を不動のものにします。
タイトル、「ティファニーで朝食を」のティファニーとは、もちろんニューヨーク5番街にあるティファニー(Tiffany & Co.)の本店のことですが、実際に本店に朝食を食べられるようなレストランが併設されていたわけではなく、映画の主人公、ホリーが言う「ティファニーで朝食を食べられるくらいのご身分」という例えです。
映画の中で、オードリー演じるホリーが一番のお気に入りの場所、ティファニーのショウウィンドウの前で朝食をとるシーンは名シーンとして語り継がれています。
また、この作品に置いて、映画史上初めて、ティファニー本店で映画の撮影が行われました。それまでは、いくら宝石店と映画関係に強固な信頼関係があろうと、盗難に関する保険などの関係で、宝石店が映画の撮影に協力するということはありませんでした。
本作で、ティファニーの営業時間を避けた夕方5時から早朝までの時間、5番街の交通を一切遮断して、約2週間かけて撮影が行われました。
また、盗難防止のため、通行人を含めたエキストラは全てティファニーの店員が演じます。その結果、ティファニーにとっても映画史に残る名作という、永遠に有用な宣伝材料を手にすることができたと言えます。
原作は当初、雑誌ハーパース・バザー上に掲載される予定でした。しかしながらこの雑誌の一大広告主であるティファニーが不快感を抱くことを恐れた編集者が掲載を拒否します。
その際、原作者のトールマンは「いまに、ティファニーが僕の本をショウウィンドウに飾ることになるさ。」と語ったと言われます。そして、この時のロケで、ティファニーがこの原作を認めたと言うことが証明されたのです。
このように見事な原作、女優、ブランドの3つがタッグを組んだこの映画は、後世まで語り継がれる、映画史に燦然と輝く名作となり得たのでした。